京都芸術大学附属高校「じぶんみらい科」ブログ

11人に1人が学ぶ。通信制高校を選ぶ人が増えているのはどうして?

作成者: 京都芸術大学附属高校|2024.10.09

通信制高校を選ぶ人が増加中。

文部科学省がすべての教育機関を対象に行っている<学校基本調査>によると、2024年度(令和6年度)の時点で、通信制高校の生徒数は、前の年度より2万5,144人多い29万118人と9年連続で増加し、過去最多となりました。11人に1人が通信制高校に通っているという計算になり、近い将来、この数値は10人に1人になると予想されています。
高校生のうち1割。そう考えると、決して少ないとは言えない数字ですよね。

さらに、少子化の影響で、全国の「全日制・定時制」の生徒数は、最多だった1989年(平成元年)の約半数にまで減少。ところが、通信制高校の生徒数は16万4422人から29万118人へと約1.8倍に増加しているのです。

 

通信制高校はすでに、特別な選択肢ではなくなっていると言えるでしょう。
今回の記事では、そうした生徒数増加の背景を考えていきます。

 

なぜ、通信制高校の生徒が増えているの?

通信制高校の生徒数増加の背景には「不登校(不登校傾向)生徒の増加」があると言われています。

不登校とは、1年間で30日以上休む児童・生徒を指す言葉。
<令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査>によると、中学1年生の時点で不登校の生徒は、1999年(平成11年)の調査から約2.6倍になっているのです。

 

不登校の要因と考えられているのは?

では、そもそもどうして不登校が増えているのか。
<令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査>において、教員を対象とした調査で挙げられた不登校の各要因を大まかに「学校」「家庭」「本人」に割り振ると、学校が39.7%、家庭は17.2%ですが、本人の無気力や不安、生活リズムの乱れや非行に要因があるとする考えは77.4%にものぼります(複数回答)。

 

不登校生が増えているのは本当に「本人」が理由なの?

急激に不登校になる生徒が増加している中、1999年(平成11年)と2022年(令和4年)を比べてみると各要因の割合に変化はなく、学校ではなく「生徒本人」に不登校の主な要因があるという見方には、変わりがありません。では果たして実態はどうなのでしょうか。

瓜生山学園で附属高校の立ち上げに携わり、現在はオンラインタイプの新学科「じぶんみらい科」の設置に取り組む徳丸成人さんは、調査によって現れる数字を長年見つめ、実際の教育現場で起こっていることについて、こう語ります。

この調査をずっと見てきた中で、原因の比率が長年同じだというのは、違和感を感じてしまうんです。その理由のひとつは、不登校が大幅に増加しているのに、その要因の傾向が変わっていないという点です。もうひとつは、通信制高校に入学してから学校に通えるようになる子どもたちをたくさん見てきたからなんです。これは本学だけの話ではなく、いろんな学校でもお聞きしたことでした。

これも僕の一意見ですが、そうした出来事を目の当たりにすると、不登校の要因は学校にある、または学校と生徒のアンマッチにあると考えた方が自然じゃないかな、と思うんです。

 

学校の型をはみ出した生徒が、不登校、そして通信制高校という選択へ。

ではなぜ、学校と生徒のすれ違いが起こるのでしょうか。

生徒も、もちろん先生も含め、いろんな個性を持っている人がいますよね。にも関わらず、学校という組織では同一性が優先されてしまったり、理由がわからない同調圧力があったり、古くからある価値観を強制されたり、みなが同じでなければいけない環境になってしまっている。つまり、自分を無理に型に当てはめて生活しなければいけない、社会とはかけ離れた、特別な小社会ができてしまっているんじゃないか、と。

そうした環境にコミットできず、不登校という形で学校を飛び出していく子どもたちが増えている。その主な要因は、家庭や本人ではなく、学校のあり様にあると考える方が納得できるんです。

 

 

通信制高校は設置された当初、全日制に通うことが難しい勤労青年の高卒資格取得を前提に、自宅学習をベースとしたカリキュラムで生徒の学びをサポートしてきました。

今では勤労青年だけでなく、「自分の個性を大切に学校生活をおくりたい」「自分らしく過ごせる環境で学びたい」「学外での活動にも全力で取り組みたい」と考える生徒からも、通信制高校の柔軟なカリキュラムや、制服・髪色などに制限のない自由な校風が選ばれています。

不登校という経験をきっかけに、自分らしい学習スタイルを考え、個性が尊重される環境を探す人にとって、通信制高校は主体的に選ぶ選択肢のひとつになっているのです。

<参考>

学校基本調査
https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm

児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査
https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/shidou/1267646.htm