「苦手だし、さっぱり分からない」
これは、じぶんみらい科の最初のスクーリング授業で「自分と英語の距離や関係は?」と生徒に聞いた際の答えのひとつです。想定内です。
「日本に住んでいるから、英語は使わないし勉強しなくていい!」
これまで英語科の教員をしていて、よく耳にした言葉でもあります。
こうした「苦手意識」や「問い」を抱きながら始まった、1年間のじぶみらの授業を振り返ります。
英語の授業で頻発する「英語アレルギー」という現象があります。教科書を開いた瞬間に、強烈な眠気に襲われるあの症状です。
かつての私も数学の授業で経験しましたので、気持ちは分かります。
まずは、このアレルギー症状を緩和し、全員に「英語と和解」してもらうこと。技能を磨いたり、好きになったりするのは、その後の話だ——そう考えて授業に挑みました。
<ライブ授業の様子>
アレルギー緩和のため、言語の背景にある「文化の型」に注目していくことにしました。
多民族社会で共通認識が少ないため、1から10まで言葉にする「ローコンテクスト文化(低文脈・アメリカなど)」と、共通認識の多さから受け手の「察し」が必要とされる「ハイコンテクスト文化(高文脈・日本など)」。
この違いを学ぶと、生徒たちは「京言葉」との共通点を見出したり、「自分の住む青森はローコンテクストかも」と身近な地域性と結びつけたりと、広域通信制のじぶんみらい科ならではの気づきが生まれました。
また、ある授業では、「英語は伝える手段」として、ラブレターを書いてみました。家族や友人、飼っている動物に向けて書いた人もいます。
ハイコンテクスト・ローコンテクスト、意訳や直訳。自分らしい表現を選んで書いてもらいました。
ある生徒が妹に向けて書いたフレーズを紹介します。
「今度コーンスープを作ってあげるね!」
なぜコーンスープなのか、その背景は私には分かりません。しかし、そこには当人同士だけの、気持ちを伝え合うための言語が確かに存在しているのだということが伝わり、ぐっときました。
"I see friends shaking hands, saying 'How do you do?'
They're really saying, 'I love you'."
「元気?」と聞いているだけだけれど、それは「愛している」と言っていることと同義なのだ——ルイ・アームストロングの “What a Wonderful World” の中でも、そう歌われています。
みんなの表現から、そのことを実感しました。
<みんなのラブレター>
1年間の学びを終えた生徒からの感想を紹介します。
1年の始めに聞いた質問、「英語との距離はどうなった?」を、もう一度聞いてみました。
・英語について勉強して考えることで、言葉についてより考えるようになりました。これから、できる限りの愛を持って、素敵な言葉で文章を紡いでいきたいと、英語を学んで思いました。
・英語はずっと難しいものだと思っていたけれど、「意外とそんなこともない?」と思ってからは、英語と距離がぐっと縮まった気がします!
・授業でみんなの英語表現が聞けて、世界が広がった感じがしました。オンラインでも、みんなの柔らかいところに触れられた感じがして、その時間は結構好きでした。
・この1年間で、英語に対する自分の考えが180度変わったなと思います。ずっと苦手意識が強かったけど、これからは積極的に学んで、自分の味方にしていきたい気持ちが強くなりました。
生徒たちは、授業での気づきを自分の日常にリフレクトさせて、丁寧に言葉にしてくれます。
「よく分からない」「ついていけなかったけど、他の人の表現を読んで共感した」などといった、一見つまずきにも思える本音が出るのは、「分からないことは学びの種。その気持ちを楽しもう」という姿勢が浸透し、生徒にとってじぶみらが安心して発言できる環境になっているから。そうであると嬉しいなと思っています。
これは、入学前の説明会から伝えてきた言葉です。
私たちの英語の授業は、単に実用的な単語やフレーズを暗記することが目的ではありません。
英語というツールを通じて、自分自身の内面や社会、そして広い世界への「見方や向き合い方」そのものがアップデートされていく。
そんな変化を大切にしたいと考えています。