先日、「デザインあ展neo」に行ってきました。今回のテーマは「動詞」。
まずは、展示を実際に体験したレポートから紹介しますね。
※「デザインあ展neo」とは、日常にあるデザインを楽しむ視点をテーマにした、NHK Eテレ番組「デザインあ」の展覧会です。京都芸術大学学長・佐藤卓先生が総合プロデューサーを務めており、子どもから大人まで「デザインって何だろう?」を楽しみながら考えられる体験型の展示になっています。
床に、シマシマの間隔が異なる3つの実寸大の横断歩道が描かれています。
この中の1つだけが本物と同じ間隔らしいのですが、普段歩いている横断歩道のシマシマがどのくらいの幅なのかなんて、意識したことがありませんよね。
実際にシマシマの間隔に合わせて歩いてみると、思ったより歩幅が小さくなったり、大股になってしまったり…。
何度も歩くうちに、頭の中にあった“横断歩道のイメージ”の記憶が薄れていくのを感じました。
公園などで見かける金属製の大きな網目のゴミ箱が、逆さ向きに天井へ貼り付いています。床には、空気の入ったゴミ袋がいくつか置かれています。
どうやら、天井のゴミ箱に向かってこのゴミ袋を投げ入れる仕掛けのようです。
数秒ごとに床から吹き上げる風にゴミ袋をのせて、天井に投げ上げる——そんな動きそのものが体験になっています。
「るてす」とは、「すてる(捨てる)」を逆さにした言葉。
何気なく行っている“ゴミを捨てる”という行為を、改めて意識させられる展示でした。
両手で抱えるほどの大きさの壺の形をしたオブジェ。
壺全体にはヒビが入っており、一定の高さまで持ち上げて手を放すと、床に落ちて勢いよく粉々にこわれます。
そして、こわれたパーツの断面には磁石がついていて、パズルのように組み合わせることで元の壺の形に“なおす”ことができます。ところが、これが思った以上に難しい。気づけば想像以上に時間が経っていました。
こどもたちはどのくらいの時間で元の形に戻していたのかな……。
これ以外にもたくさんの展示があり、気づけば大人が夢中になって遊んでしまう場所でした。
外に出たときには、すっかり日が暮れていました。
「動詞」と聞くと、国語の授業を思い出す人もいるかもしれませんが、ここでいう「動詞」は文法の話ではありません。
すわる、めくる、おす、まわす…。
私たちの一日は、たくさんの“動詞”でできています。
動詞とは、私たちとモノのあいだに生まれる“行動”のこと。そして、その行動を支えているのがデザインなんだと実感しました。
デザインは、私たちの「動き」とつながっているのです。
デザインというと、「特別な才能を持った人がするもの」と思われがちかもしれません。でも実際は、誰もが日常の中で自然に行っていることでもあります。
朝の身支度、部屋の片づけ、友だちへのプレゼント選び——。
どれも「人と動詞をつなぐデザイン」です。
展示を見ながら、「デザインは“つなぐもの”なんだ」と改めて感じました。
人とモノ、人と人、そして人と動詞をつなぐことで、生活はもっと豊かに、やさしくなるのだと思います。
今回の経験で気づいたことを、いつかの美術の授業に活かしていきたいです。