作品との出会いから始まる国語の授業!レポートは生徒と手紙をやり取りするように。− 先生インタビューvol.1 | 佐々野 美帆 先生
<目次>
・「自分ごととして作品と出会う」授業が、国語で触れることばを、生活のことばと結びつけてくれる
・おわりに
「自分ごととして作品と出会う」授業が、国語で触れることばを、生活のことばと結びつけてくれる
──じぶんみらい科は、どんなふうに国語の授業を進めていくのでしょうか。
1年生の国語では12.5分の動画が4本(合計50分)で1セットになっていて、1セットでひとつの作品を扱っていきます。今はちょうど1年生前半で扱う『鍋洗いの日々』という随想の動画授業を制作中です。「メッセージを受け取る」というテーマで制作していて。
──作品のもっているメッセージ、ですね。
随想って、比較的「たら〜」っと読めちゃうと思うんですね。
──たしかに、日記にも近い文章だから、論説文なんかに比べると、読みやすいです。
そうなんです。だからこそ作者がそれを書きたかったんだろうっていうことを、書かれてあることから読み取る練習をしてもらおうと思っています。
流れとしては、1本目の動画でまずじっくり作品を読んで、どんなことでもいいから一言感想を書いてみる。
2本目の動画では、作品からメッセージを受け取るということを、そもそもメッセージってなんだろうということから考えるんです。「筆者の言いたいこと」や「テーマ」と言い換えられるかも、と。
3本目では、本や文章からメッセージを受け取るように、実はみんな、人との会話の中で、メッセージを受けとるということを日常的にしているんじゃないか? と投げかけていきます。
そして4本目の動画では、レポートで実際に出題される問題を意識して、問題を解くときのテクニックや考え方を、時には小学校・中学校レベルまで戻りながらおさらいしていくんです。
──基礎的な国語の授業から、日常のコミュニケーションへもつながっていくんですね。
なんせ、3年間の国語での学びを通して、実生活で役に立つ広い意味での読解ができるようになってもらいたいですし、受け取ったメッセージに対して、何かしらの反応ができる人になってほしいんです。
──「反応」というと、感想をもったり、それを言葉にしたり、ですか?
そうですね。たとえばこうして会話をしているときに相槌を打つとか、人の意見を聞いたときに自分の意見を伝えてみるとか、日常生活の中にあるやりとりも「反応」だと思うんです。それと同じように、作品と出会ったときにも、反応できる人になってほしいな、と思って授業を作っています。
でも、学校の授業が作業になればなるほど、「反応する」って難しくなると思うんです。なので1年生の間は、授業で作業として作品を読むのではなく「自分ごととして作品と出会う」練習をします。その上で、2・3年生になったときにその力をいかして、考える力が身についていったらいいな、と思っています。
──自分ごととして作品に出会えたら「反応できない」作品も、「どうして反応できないんだろう?」と考えられそうですね。
メッセージを読み解いて、考えたり、意見を返したりするためには、実はいろんな教養や予備知識が必要です。国語はそういうところも含めて学ぶことができる、生きていくこと、実生活につながっている科目なんですよね。
先生が選んだ通りに教科書を読むからわからなくなっちゃうけど、実は社会で生きていくためのヒントが、たくさんつまってるんです。
レポートが、手紙を交わすような対話の場所に
──コミュニケーションについて考えられる授業ですが、やっぱりオンライン授業は先生と生徒の会話が少なくなってしまいそうなイメージがあります……。
私もはじめて通信制の高校に来たときは、そのことに悩んだんですよね。子どもたちの力をどうやって見ていこう、と。でも、ヒントがレポートにあったんですよ。
──じぶんみらい科でも生徒のみなさんはレポートを提出しますね。
そう。レポートのなかでその生徒の考えや思いを引き出すような問いをつくって、考えたことをその生徒の言葉で書いてもらうんです。
「国語」と「美術」の添削例。
──授業中に発表するのと違って、思っていることが素直に書けそうですね。
そうすると、実はここで会話が生まれるんです。生徒が書いたことに対してコメントを返すという意味でもですし、次リアルタイムのライブ授業をしたときに、あのコメントを書いてくれた生徒が、今度はチャット欄でこんなことを言ってくれているなとか、日々もらうことばの一つひとつが、つながっていくんです。
通学タイプだったらそれを教室の中で繰り返すことが多いんですけど、オンラインの場合は、提出してくれたレポートから1対1の会話が始まるから、一番大切に、丁寧に読もうと思っています。
──先生がそんなふうにレポートを読んでくれている、と思うと、背筋が伸びそうです。
ひとつずつ丁寧に見ていくことが一番大事な気がしています。そうすることで、本当に、手紙のやりとりみたいになっていくんですよね。反応が返ってくるとわかると、生徒が書いてくれる量も増える。そんなキャッチボールが3年も続いていくことが、すごく嬉しいんです。
おわりに
インタビュー前後も、通学コースの生徒や通りがかった卒業生に手を振っていた佐々野先生。
先生が京都芸術大学附属高校にきたきっかけをたずねると「ずっと、卒業生が学校に帰ってくるのを出迎えることに憧れていたんです。でもそれって、私も生徒も学校を好きじゃないと、と思って。」という答えが返ってきました。
授業動画やオンラインでの学習の仕組みを準備しながら、みなさんの帰ってきたい場所になれるよう、「じぶんみらい科」の先生たちは日々準備中です!
動画授業をご紹介!
国語科の佐々野先生が担当する動画授業の一部をご紹介します。どのように国語の授業を進めているのか、どのように作品と向き合い、国語の力を実生活に結びつけていくのか、その具体的な方法や工夫を動画を通じて体感してみてください。
Profile
佐々野 美帆(ささの・みほ)先生 / 国語科
ニックネーム…さささ
最近ハマっているまんが…『九龍ジェネリックロマンス』
SF的な物語のなかに、自分の存在や価値ってなんだろうという、人間のもっている大きな問いがあって、いつもゾクゾクしながら楽しく読んでいます。
大学周辺おすすめスポット…白川大銀食堂(元田中)
昭和っぽくてなんでも美味しい食堂です。最近はここのオムライスばっかり食べています(笑)
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