洗濯物とアートの関係

洗濯物とアートの関係

美術科のりさてぃです。
突然ですが、皆さんには推しはいますか?

私は自分に「◯◯推し」「◯◯オタク」と言えるものがない、としょんぼりしていた時期があります。

今や若者に大人気の「イタバ」(=痛いバッグの略で、推しの缶バッジだらけだったり、色を統一していたり、ファンであることが一目でわかるバッグのこと)を生徒が持っていたり、コスプレでしっかり推しになりきっていたりするのを見るたびに、敵わないなあと思っていました。
全身で表現できることに、うらやましさを感じていたんですね。

 

見つかった◯◯オタク

ところがある時、ひとりの先生に「普通そんなことしないよ」と言ってもらって、私も強めのこだわりを持っていることに気づきました。

私のちょっと変なこだわりは…洗濯物を色のグラデーションに干したい!というものです。
つまり自分では気付かなかっただけで、グラデーションオタクだったのです。

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※写真はイメージです


白から黒へ流れるように、間にグレーのものを干して、赤や緑などのビビットカラーは少し離れたところに、アクセントになるように干します。
かごの底に見つかったタオル1枚のために、すでに干したものを移動させることもあります。

もちろん洗濯物をグラデーションに干したところで、一見何も生み出しません。
乾いたあと、取り込むときに結局混ざることになりますし、色別になっているかどうかと、その後の収納のしやすさは、まったく関係ありませんよね。

むしろ、いっしょに干そうとしてくれる人に「あ、その白はこっちね」などと指示を出してしまって、嫌がられる弊害の方が大きいかもしれません。

それでも止められない理由があります。

干し終わったあと、一息ついて全体を眺めたときの景色が本当に美しいんです。
使い込んでよれてきたタオルや、襟元が伸びてしまったTシャツまで、グラデーションに並ぶと、ぱりっときれいに見えます。

 

色の神秘

グラデーション

グラデーションを美しく感じる、気持ちよさや快感がある、そんなことが起きるのは、これだけ多くの色が見えるように設計された人間の身体の神秘かもしれません。

私たち人間は、およそ100万もの色を識別することができると言われています。識別できる色の数が少なかったら、きっと洗濯物の色並びは気にならないだろうし、看板や建物の色など街並みの色がごちゃごちゃしているのも気にならないでしょう。

それは同時に、花が咲いてから枯れるまでの小さな色の変化や、刻々と変化する空のグラデーションに気づき、感動する力でもあるのかもしれません。

ちなみに、京都には景観条例というルールが存在します。
ポスターや看板などの屋外広告物の色彩は、「定着する建築物等の色彩と不調和でなく、かつ、落ち着いた色彩であること」と定められていて、たとえ企業のロゴなどのカラーが決まっていても(特に飲食店は鮮やかな赤や黄色が多いですが)少しくすんだ色に変更して街並みの色に合わせることに決まっています。
京都に来るときにはぜひ、その点も意識して街並みを楽しんでみてください。

 

周りを観察するところから

美術の授業で何かを制作するとき、何も指定なく、十何色もある絵の具を扱ったり、形を決めたりするのは、ハードルが高く感じることがあるかもしれません。
しかし周りを見ると、デザインされたモノには何かしらのルールが使われているのが多いことに気づきます。
「美術Ⅰ」の授業では、観察するところからスタートします。観察・表現を行き来しながら、自分の興味の幅を広げていきましょう。

洗濯物のグラデーションも、もし興味を持ってくれた人がいたら、ぜひやってみるのをおすすめします。
コツは、洗濯機から取り出すときにおおまかに色分けすることです!(誰もやらない…?)

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